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2023年7月期に放送されたTBS金曜ドラマ「トリリオンゲーム」。主人公・ハルは目黒蓮のこれまでのイメージを鮮やかに覆すはまり役となったことも、記憶に新しい。座長でもある目黒を中心に“チーム・トリリオン”の結束は固く、ハードな撮影スケジュールの日々の中、村尾嘉昭監督はじめスタッフ陣の間では「映画化」を目指す熱い想いは静かに燃えていた。「ドラマの撮影中は、目の前のことにがむしゃらに取り組むだけでした」と目黒が語っているように、チーム一丸となって最終話の撮影まで駆け抜け、ついに、映画化の話が動き出した。だがドラマで既に日本№1のIT企業に“トリリオンゲーム社”を上り詰めさせた、ハル&ガク。「その後の2人の活躍をせっかく大きなスクリーンで見てもらうためには、ドラマよりさらに迫力のあるスケールの大きなお話にしなくてはいけないと思いました」と語る松下ひろみプロデューサー(以下松下P)の想いは、全スタッフに共通するものだった。同時にドラマの最終話では仲間たちのために自らが危ない橋を渡り、姿をくらませていたハルの空白の時間をどう描くか。さらに、映画で初めて作品を観た人でも楽しめるように、キャラクターの関係性をどうわかりやすく描くかなど、課題は山積みでもあった。
「凡人の僕らはハルのような男が、これから何をしでかすか。それを考えるのがいちばん難しかったかもしれません」(監督)ドラマで原作の先のオリジナルとなるラストを描いていた以上、映画はさらにその先を描かざるを得ない状況の中、“カジノリゾート開発”というストーリー軸や、映画から登場するカジノ王・ウルフなど新しいキャラクターの参戦は、ドラマから引き続き監修を担う、原作の稲垣理一郎氏、作画の池上遼一氏からのアイディアに助けられたという。「ハルとの関係性やキャラクターの魅力を広げるアイディアをたくさんいただきました。また、想像をはるかに超える大きな事業への挑戦を描くのに、“こういう時ハルだったら、ガクだったらどうするだろう?”というお話もさせてもらいながら、脚本がだんだんと形になっていった感じです。池上先生は“いつも自分はいい男を描くぞ!と思って描くけど、実際はそんないい男はいないだろうと思ってたら……いたんですね”と目黒さんのことをおっしゃっていて(笑)。嬉しいことですね」(松下P)
「これはドラマの時からですが、両先生ともキャラクター性を守ってくれさえすれば、あとは自由にやってくださいというスタンスでいらっしゃるので本当にありがたいです。稲垣先生からはドラマの時からも“あ、これ漫画でもやりたかったな”なんて言ってくださって。こちらとしては感謝しかありません!」(松本明子プロデューサー、以下松本P)
脚本制作が進む中、同時にスタッフ陣を悩ませたのは、豪華な世界観を現実に表現するための撮影準備だった。ご存知の通り日本でカジノはまだ存在しない。誰も見たことのない日本のカジノのイメージを、0から構築していく作業は難航を極めた。「日本初のカジノを作ろう!というのはとても映画にふさわしい題材ですし、まだ見たことのないものを映画で先にやれる幸福は感じました。ただ撮影は大変になるだろうなと……(笑)。」(監督)
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本作では日本初のカジノが、スクリーンで燦然と輝いているのを見ることができる。「カジノのセットは本当にすごかった!撮影を忘れて遊びたくなるほどでした(笑)」という目黒の興奮気味のコメントが物語るように、そのリアリティは徹底している。しかしそこにはスタッフの並々ならぬ努力と苦労があった。
「正直、カジノを作るのは予想以上に大変でした。日本には勿論存在しないので海外で営業しているカジノに問い合わせて撮影に使えないかと交渉してみたのですが、カジノって大体どこも24時間フルに営業しているものなので、現実的に撮影は難しい。これはどうしたものかと……」(松本P)そこで実力を発揮したのが、優秀な美術部と制作部チームだ。架空の島に一大カジノリゾートを作るという設定上、制作部が全国を探し回り、ついに見つけた某ロケ地を美術部総出で作りこんでいく作業が連日連夜行われた。
「日本初のカジノがしょぼいわけにはいかない!という想いで、美術部総出で本当にがんばってくれました。言い方が難しいですが、安っぽくなくお金がちゃんとかかっていると思えるものにしたかったんです」(監督)広い敷地にはオリジナルのスロットマシーンを何台も設置。天井から吊るされたユニークな形のゴージャスなシャンデリアは、照明部による渾身の手作りの一品ものだというから驚く。「スロットマシーンなんて、“何台用意したんですか?”と思うくらいの数があって。カジノのフロアの入口からドローンを飛ばして、長い1本道を一気に奥まで撮るという画は“すごっ!”と思いました。改めてこれは映画映えするなと」(目黒)
各部署が垣根を超え全員で作り上げたカジノセットは、そこで芝居をする役者陣の士気をあげるに十分な仕上がりとなった。
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映画ならではのスケールアップ感は至るところに感じられるが、それと同時に制作陣が大切にしたのは“ハルとガクの変わらぬ友情”。「そこはドラマからの核となる部分でもあるので、どれほどスケールが大きい話になろうとも大事にしようとは思っていました」(松下P)実際にドラマ以降も交流を深めていた目黒と佐野勇斗は、ドラマから約半年ほどの期間が空いていたにも関わらず、撮影初日から既に“ハルガク”の空気に戻っていたという。「お2人は本当に仲が良く、“言わずとも分かり合える”という雰囲気が出来上がっていました。アドリブの時の二人のツーカーぶりも健在でした!また遠方ロケでの撮影の合間には、2人きりで食事に行かれていたりしてとても良い関係性だなと」(松本P)目黒自身も佐野との再会を喜びつつ、「佐野くんとはドラマで関係値ができていたのかなと思います」と語る。「だから新たに関係を作ることなく、そのままの関係性でいけた。そういう意味でもドラマで築き上げたものは大きかったのかなと思います。僕もクランクインからあまり迷うことなくハルという役を演じられましたし、ドラマからの共演者の皆さんもスッと役に入っていかれたように見えました」だが監督の目には目黒の役者としての変化、成長ははっきりと映っていた。「すごい勢いで成長されているんだなというのは、客観的に見ても思うし、作品を見ても思いました。ドラマが始まる前は目黒さんと佐野さんと僕の3人だけで、リハーサルをするという時間を作ったりしていたのですが、映画では最初からハルというキャラクターを即キャッチして、何の不安もなく最初から完璧なハルでした! 座長として見せる背中が一回り大きくなっていたように感じましたね。佐野さんのガクとしての天才的な受け芝居のバランスも最高で、映画版ではお芝居をつけた記憶がないくらいです。何より目黒さんと佐野さんがお互いをリスペクトしているのが伝わってきますし、ハルガクコンビには成長しか感じませんでした」(監督)ドラマからの成長として、二人のスーツもより高級なものになるなど微妙な変化が。ハルの衣装には、派手に光る柄モノのジャケットなど、長身でスタイル抜群の目黒だからこそ着こなせるものも多数。対してガクは「あえてビジュアルを戻した部分もあるんです」と松下P。「ドラマの時に未来を描いた描写があったのですが、その時は細い銀フレームの大人っぽいメガネにして変化をつけました。でも今回の映画ではあえて黒ブチのいつものメガネに戻っています。佐野さん含め皆で相談して、やっぱりこれがガクらしい愛らしさがあるよねと」実際は端正な顔立ちの佐野=ガクの、漏れ出る“イケメン封じ”も重要なテーマ。原作のビジュアルに寄せた、眉にかかる少し重たい前髪と変わらぬ黒ブチメガネで、「ガクの可愛さが消えないよう、皆で一生懸命イケメンを隠しました(笑)」(松本P)。
変わらないと言えば、相変わらずのド派手なゴージャスファッションで、我々を楽しませてくれるキリカ=今田美桜も健在だ。「キリカ様の安定感、美しさは今回もすごいインパクトをもたらしてくれます。ハルとキリカの並びは観る人をワクワクさせてくれると思うので、大事なところにしっかりと登場していただき、こちらとしては“ありがとうございます!”という気持ちでした」(監督)ハルとキリカの一筋縄ではいかない関係も、本作の見どころのひとつ。「ハルとキリカって原作でも絶妙な距離感を保っているんですが、あの距離感は普通の恋愛映画では出せないものだなと。簡単にはいかない2人の感情のやり取りと距離感に、目黒さんと今田さんも役として真摯に向き合ってくださいました」(松下P)ともに“ワガママ同士”のハルとキリカは、恋愛関係というよりも最高のライバル関係であることが大前提なようだ。
一方トリリオンゲーム社の、真面目社長・凜々(福本莉子)には、目に見える変化が。ドラマの初登場時は、典型的なカタブツ女子で飾りっ気のないリクルートスーツ姿だった凜々が、今回の映画版ではドラマでは見られなかった新しい姿も見せてくれる。ヘアメイク、アクセサリー、ファッションの変化には是非注目してもらいたいところだが、ハル&ガク&凜々の3人が揃った時の空気感はやはりドラマを彷彿とさせるものが。「あのトリオになると、とたんに懐かしい感じになりますよね。福本さんは凜々のカタブツな感じもちゃんと忘れていなかったし、同時に映画では少しカタさが取れたナチュラルな凜々が見られると思います」(監督)「ちょっと2人が弟と妹みたいに見えてきちゃって(笑)。それくらい3人のシーンは安心感がありました」(目黒)もうひとつ目黒が「落ち着く場所」と語っていたのが、トリリオンゲーム社の仲間たち。ドラマ時よりさらに大きくなった社屋で、変わらぬ仲間たちとの撮影は、まるで同窓会のような盛り上がりを見せた。
そしてトリリオンゲーム社を頼もしく支え続けてきた敏腕投資家・祁答院=吉川晃司も嬉しい続投。「吉川さんにはドラマの時から本当に助けていただいています。吉川さんと目黒さんの結びつきも強いですし、共演シーンの合間には2人で楽しそうにお話されていました」(松本P)今回も敵か味方か分からない危うさは残しつつ、圧倒的な存在感とチャーミングな言動でスクリーンを締めてくれる存在だ。「吉川さんが発せられる言葉ひとつひとつに重みがあるので、ハルとガクの悩みや葛藤する姿がより深く感じられるんです」(松下P)
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映画版から参戦する3人のゲストキャスト陣も超豪華。ハルの“ワガママの師匠”であり、何やら深い因縁がありそうなマカオのカジノ王・ウルフを石橋凌、ウルフの最側近として仕え美しきディーラーでもあるラモーナにシシド・カフカ、巨大財閥企業の社長・宇喜多に田辺誠一という盤石の布陣が実現した。
「マカオのカジノ王という設定に、日本の役者さんで説得力をもたせてくれる方は限られるなと思ったんですが、石橋さんは若者をいい意味で威圧する貫禄のある方で、かつ海外の作品でも活躍されて英語も堪能なお方。思い切ってオファーさせていただいたところ、ご快諾いただき本当にありがたかったです」(松下P)石橋はウルフというキャラクターを撮影前から深く考察。衣装合わせに現れた彼は、自身発案の金髪&ブラックネイルというビジュアルになっておりスタッフを感嘆させた。「衣装を合わせる時点で金髪にしておかないと衣装のイメージが変わってしまうからとおっしゃって、そのプロ意識の高さに感動しました。役的に手元が映るシーンも多いのでと、私物のアクセサリーも持ってきてくださり、ウルフ像がどんどん出来上がってありがたかったです」(松本P)P陣の想像を上回る完璧なウルフが早々に完成した。
キリカとはまた別のタイプの強い女性像=ラモーナを体現したシシドは、今回ディーラーとしてのカードさばきを撮影前から猛特訓。その甲斐あり本編では、鮮やかなカードさばきを披露している。「撮影中も出番の時間より随分先に入られて練習されていました。その成果もあってあのカードさばきは見事でした!ご自身もサバサバされた気持ちのいい方で、女性も憧れるかっこいい女性でした」(松本P)カードさばきを練習するあまり、カジノテーブルの素材の違いによる滑りやすさ、細かな傾斜の違いなども触れただけで分かるほどになっていたというから驚く。またキリカに負けず劣らずの、ラモーナ流ゴージャスファッションにも注目したい。
田辺演じる宇喜多は、一見クセのないスマートな社長だが……。「今回のハルたちは、パっと見はクリーンに見えるライバルと戦わなければいけない。上品で物腰も柔らかい田辺さんは、ハルたちがまだ戦ったことのない敵としてクセ者感を出してくれました」(松下P)同時に「宇喜多はどこか人間味もあるんです」と監督。「宇喜多のあるシーンでは、台本にないところまで思い切り振り切って演じてくださって最高だな!と思いました」田辺は以前ドラマ「消えた初恋」で目黒と共演しており、久々の再会を喜ぶ姿も。「田辺さんとのシーンはピリッとした緊張感が漂っていて、改めてこういう緊張感が僕は好きだなと思いました。普段の田辺さんはどこか余裕をもってらっしゃる印象があって、合間におしゃべりさせてもらうのも楽しかったです」(目黒)
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今作で本格的な現代アクションに挑戦した目黒は、多忙なスケジュールの合間を縫って短いながらもアクション練習に参加。その高い身体能力と覚えの速さは、監督とは『忍びの家』でタッグを組んだアクション監督・田渕景也をも驚愕させたという。「アクション監督が動きを説明すると“はい、分かりました”とすぐに形になってしまうので、練習はスイスイ進みました。正直それほどアクション練習に時間を割くことはできなかったのですが、本番でも思い切りのいいアクションを次々と見せてくれてほぼ1発OKでした」(松下P)モンテネグロの街をガクとともに全力疾走したり、カジノテーブルの上に飛び乗りチップを長い足で蹴り払ったり……極めつけは次々と襲ってくる敵との本気バトル!「ハルのアクションは今回の大きな目玉だと思っています。オーダーメイドのスーツも動ける仕様にしてもらったので、あれだけ足を上げても破れなかった(笑)。アクションをしている時の目黒さんは目がキラキラしていたので、本当に動くことがお好きなんだろうなと。映画全体としてもハルのアクションがあることで締まりますし、とても大事なシーンだったと思います」(監督)カジノ内での長尺のバトルシーンは、原作の稲垣氏がちょうど撮影見学に訪れておりハルのアクションを見て大興奮! 目黒も撮影後しきりに「もっとやりたかった!」と語っていたように、アクション俳優=目黒蓮の姿を見る日も近いかもしれない。
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ドラマ時から進展するようでしない、もどかしいガクと凜々の関係性にムズキュンしていた視聴者も多いだろうが、映画版ではついに2人の関係に変化が訪れる!?「あのなかなか進まない感じがこの2人のかわいいところ。ドラマの時、目黒さんは“わかりました!僕はこの2人の兄なんだと思います”とおっしゃっていましたが、今回2人を見守る姿はまるでお父さんのようでもありました(笑)」(監督)目黒もこの2人の関係は大のお気に入りだそうで、「正直“いつまでやってんのかな?”と思いますけど(笑)、この関係性が僕はすごく好きです」と語っている。
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世界を股にかけるハルの活躍をスクリーンで描くためには、壮大なロケーションはマスト。大都会を主戦場としていたドラマとは違い、今回は全国各地、様々な場所でロケを敢行している。
「カジノリゾートを作る“島”を探すのが最大の命題でした。ロケハンをしながら脚本を作っていったのですが、実際の島民の方たちに“もしこの島にカジノを作るとなると、賛成ですか?反対ですか?”という取材をすると、意外に意見が半々になったりして。そういうリアリティも脚本に反映していますし、今回はロケハンから派生したことがとても多いですね」(監督)実際の島ロケは、当然ながらキャスト陣も船で現場まで毎日通うことになったが、「船で現場入りするということが初めての経験だったので、なんかすごいなと」と目黒も笑顔。「帰りはガクと凜々と3人で船に乗って夕日を見ながら、海風を浴びたりして。青春感もあって楽しかったです」
実際の島民の方々にもエキストラ出演してもらうなど、島全体が本作に協力を惜しまないことも「本当にありがたかったです」と監督。「島の方々がお弁当や新鮮なお刺身を提供してくれたり、食堂のシーンでの撮影が終わった後は温かいお味噌汁を出してくださったりもしました。これが本当においしかった! 島民の方々にもエキストラとしてたくさん出演してもらっていますが、皆さんお芝居が上手なことは嬉しい驚きでした」
島ブロックを経て、後半は都内近郊でのロケも行ったが監督が最も印象深いのは“ハルとウルフの回想シーン”だとか。「都内の某バーで撮影しましたが、僕はモノクロ映像で撮るのが大好きなこともあり、あの撮影はとても楽しかった。少し若い頃のハルが僕の中の“ベストオブハル”な気がしていて、めちゃくちゃかっこいいハルをお届けできる自信があります(笑)。エキストラはメキシコの方ばかりでしたが、石橋さんが英語で場を盛り上げてくれて、目黒さんも終始楽しそうでした」
最初から最後まで一瞬も気が抜けない濃密なシーンの連続は、恵まれたロケーションとの奇跡的な出会いがなせる技でもあった。